ロコモティブシンドロームの予防方法は、「栄養管理による予防」「運動習慣による予防」「社会と関わることで予防」の3つがあります。
それぞれの方法では、ちょっとしたポイントがあります。
例えば、「日光を浴びることは栄養面では重要!」とか、「有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用がいい」、或いは「閉経後の女性に必要な栄養は?」など「へ~」と思うポイントがあります。
今回は、3つの予防方法にプラスしてちょっとした「へ~」も合わせて説明させて頂きます。
ロコモティブシンドロームとは
加齢により筋力等が低下して「立つ」「歩く」といった運動に支障が出てしまい、要介護や寝たきりになってしまう状態を言います。
詳細は下記をご覧ください。
ロコモティブシンドロームとはロコモティブシンドロームの原因
ロコモティブシンドロームは、「立つ」「歩く」ことにフォーカスしています。
理由は、自立した生活を行う為には「立つ」「歩く」という基本機能が必要だからです。
この一連の連携動作に関わる「骨、筋肉、関節、神経など」が運動器です。

この運動器に支障が出ることで、ロコモティブシンドロームになります。
支障が出る原因は、様々ですが主に下記3つとなり、その原因は「栄養不足」と「運動不足」による「体の虚弱」になります。
- 骨粗鬆症
- 変形性関節症/変形性脊椎証
- 筋力低下
予防方法
ロコモティブシンドロームの予防方法には「栄養管理」と「運動習慣」の2つの方法を同時並行的に取り組むことで予防・改善に向かいます。
予防その1:栄養管理による予防
摂取する栄養に関しては、5大栄養素をとることが推奨されています。
- タンパク質
- 脂質
- 炭水化物(糖質)
- ビタミン
- ミネラル
栄養はバランスよく摂取する方が良いです。
しかし、均等に食べても目的を達成する為の効率的な予防にはなりません。
目的の為にどのようなバランスで栄養を取るかが重要です。
ロコモティブシンドロームの予防は、自分で立って、歩けるだけの筋力を増やすことが第一の目的となります。
その為、重要なのは、「骨を強くし筋肉を増やす為に、5大栄養を食品からどれくらい摂取するとよいのかを把握することが重要です。
筋肉を増やす栄養
筋肉を増やす為には、タンパク質が重要です。
タンパク質は、血液や筋肉を作ってくれます。
タンパク質で、すぐに思いつくのは「お肉」です。
牛肉、豚肉、鶏肉、どれも高タンパク質な食材です。
お肉には脂質も多く含まれている為食べすぎると太ると思われがちですが、お肉自体はイメージするほど太りません。
太る原因は、ご飯(炭水化物:糖質)を多く食べてしまうことです。
お肉があると、ご飯が食べたくなりますよね。
特に焼肉のタレはご飯がすすんでしょうがありません、、、。
つまり、お肉自体がNGなのではなく食べ方を注意する必要があるのです。
ただし、お肉はタンパク質が含まれている他の食品に比べて脂質が高いです。
バランスを考えるとお肉だけではなく、お肉以外の食品からタンパク質を摂取できる方がより体に良い食事になります。
おいしいお肉を食べたら、次の食事では、低脂肪・高タンパク質な食材を選ぶことが重要です。
【例】
体重60キロの場合
60kg × 0.8g = 48g
食品 | タンパク質(グラム) |
---|---|
無脂肪・低脂肪ヨーグルト(1食目安110g) | 4.0g〜12g |
無脂肪牛乳(コップ1杯200ml) | 8.5g |
枝豆 (100g) | 11.5g |
豆腐(100g) | 6.5g |
マグロ刺身(100g) | 21〜25g |
ツナ缶(1個) | 16〜18g |
鶏むね肉(100g) | 24g |
鶏ささみ(100g) | 24g |
豚ヒレ(100g) | 22g |
骨を強くする栄養
骨を強くする栄養は「カルシウム」ですが、日本人は全般的にカルシウムが不足しています。
「食生活が欧米化したことで、魚を食べなくなった」というのが日本人がカルシウムが不足している理由のようです。
ファーストフードやファミリーレストラン、牛丼店等、安く手軽に食べれるお店にはお肉料理が多いですが、魚料理は少ないです。
その為、必然的に肉料理が多くなるのだと思います。
では、どのような食品からカルシウムを摂取すればよいでしょうか。
カルシムは以外といろいろな食材に入っています。
とりやすい食品を選んで食生活に含めることをお勧めいたします。
年齢 | カルシウム(mg/日) | |||
---|---|---|---|---|
推定平均必要量 | 推奨量 | |||
男 | 女 | 男 | 女 | |
30〜49(歳) | 550 | 550 | 650 | 650 |
50〜69(歳) | 600 | 550 | 700 | 650 |
70以上(歳) | 600 | 500 | 700 | 650 |
食品 | 容量 | 含有量 |
---|---|---|
シシャモ | 3尾/60g | 198mg |
イワシ丸干し | 1尾/30g | 132mg |
干しエビ | 10g | 710mg |
シラス干し(半乾燥品) | 大さじ2/10g | 52mg |
食品 | 容量 | 含有量 |
---|---|---|
生揚げ | 1枚/120g | 288mg |
木綿豆腐 | 半丁/150g | 129mg |
凍り豆腐 | 1コ/20g | 126mg |
納豆 | 1パック/50g | 45mg |
食品 | 容量 | 含有量 |
---|---|---|
牛乳 | 1杯/200g | 220mg |
スキムミルク | 大さじ2.5杯/20g | 129mg |
ヨーグルト | 1カップ/100g | 120mg |
プロセスチーズ | 1切/25g | 158mg |
食品 | 容量 | 含有量 |
---|---|---|
小松菜 | 1/4束 / 95g | 162mg |
乾燥ひじき | 10g | 100mg |
チンゲンサイ | 1株/100g | 100mg |
干しワカメ | 5g | 39mg |
カルシムをとる場合にはできるだけ一緒に食べるとよい食べ物があります。
それは、ビタミンDが含まれている食品です。
その理由は、カルシムは体への吸収率が悪い栄養素なので、カルシムの吸収を助ける為にビタミンDを摂取する方がよいからです。
カルシムが多く含まれている牛乳の場合でも、牛乳に含まれているカルシウムは最大でも50%しか吸収されないという実験内容があります。
各食品および食品群別のカルシウム吸率をみると牛乳のカルシウムの吸率が39.8±7-7%と小魚の32.9±8.4%,野菜の19.2±10-8%よりも高くなった。
カルシウムを含む食品を摂取する機会が減り、且つ摂取しても吸収率が悪いので、カルシム不足になるのも仕方のないことですね。
その為、少しでもカルシムを吸収率する為に、ビタミンDが含まれる食品を一緒にとることをお勧めします。
年齢 | ビタミンD(mg/日) | |||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | |||
目安量 | 耐容上限量 | 目安量 | 耐容上限量 | |
30〜49(歳) | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
50〜69(歳) | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
70以上(歳) | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
食品 | 含有量(100g中) |
---|---|
紅鮭 | 33.0g |
さんま | 19.0g |
うなぎ | 18.0g |
まがれい | 13.0 |
食品 | 含有量(100g中) |
---|---|
きくらげ(乾燥) | 84.4g |
干しシイタケ | 12.7g |
日光を浴びるのも重要
人間はビタミンDを食品から摂取するだけではなく実は必要なビタミンDの半分を自分の体の中で作っています。
しかし、体の中でビタミンDを作るには、日光(紫外線)を浴びる必要があります。
紫外線というと「日焼けしたくない」「シミの原因になる」と思いますよね。
特に女性は、紫外線予防として日焼け止めやUVカットファンデーションでしっかり対策をとっていると思いますが、この紫外線対策がビタミンDを体の中で作る妨げになっているのです。
紫外線の多い地域と少ない地域により1日に浴びる必要がある紫外線の量は違いますが、おおよそ20~30分と言われています。
とは言っても、紫外線対応をしないで20分以上日光を浴びるのは抵抗があると思います。
そのような方はサプリメントで栄養を補いましょう。
高年齢の女性にお勧めの食品
閉経後の女性は、骨粗鬆症になりがちです。
なぜ骨粗鬆症になりがちかと言えば、閉経の時期になると骨からカルシウムが流出するのを防ぐ女性ホルモンが減り、骨にカルシウムが蓄積されるより流出する方が多くなる為、骨の密度が落ちてしまうからです。
減った女性ホルモンの機能を補うために、イソフラボンを摂取することをお勧めいたします。
食品 | 容量 | 含有量 |
---|---|---|
納豆 | 1パック(50g) | 65.0mg |
大豆飲料 | 125ml | 69.0mg |
豆腐 | 1/2丁(110g) | 55.0mg |
油揚げ | 1/2枚(75g) | 52.5mg |
大豆煮 | 50g | 30.0mg |
きな粉 | おおさじ1(6g) | 15.6mg |
みそ | おおさじ1(18g) | 7.2mg |
予防その2:運動習慣による予防
ロコモティブシンドロームの予防により、筋肉をしっかり増やし、「立つ」「歩く」ことをひとりで行えるようになることが目的です。
その為に必要な予防として栄養管理を紹介しましたが、筋肉を増やすし、骨を強くする為には栄養を摂取するだけでは不十分です。
必ず、適度な運動が必要です。
それも、日々行い習慣化する必要があります。
筋肉は負荷を与えないと増えない
筋肉を増やす為には、筋肉の繊維を傷つける必要があります。
なぜなら、傷ついた筋肉の繊維を治そうする過程で筋肉が大きくなっていくからです。
そして、その治す為に栄養が必要なのです。
しかし、そもそも筋肉が傷つかないと筋肉を治せないので筋肉が増えないことになります。
その為、筋肉に負荷を与えて傷をつける必要があるのです。
運動の習慣化には、有酸素運動をお勧めします。
そして、筋力アップに緩やかなレジスタンストレーニングを行うと効果が高いです。
有酸素運動とレジスタンストレーニング
有酸素運動は、筋肉に負荷を与えるというよりは、ゆっくりの運動を長い時間行う運動です。
ゆっくりの運動を長く行うことで、体内の糖質や脂質を燃焼させることができますので肥満対策に有効です。
有酸素運動には、「散歩」「ウォーキング」があり、高齢者の方には取り掛かりやすい運動と言えます。
詳細は下記をご覧ください。
有酸素運動また、レジスタンストレーニングは筋肉に力を入れる運動です。
つまり、筋肉に傷をつける作業になります。
バーベルを上げるといった高い強度の運動から、スクワットといった低い強度の運動までレベル分けできます。
筋肉を増やすと言われると「ベーベル」を上げるといったイメージを持ちますが、低い強度の運動を回数多く行うことで高い強度の運動と同等のトレーニング効果が得られると言われています。
ロコモーショントレーニング
以降では、ロコモティブシンドロームの予防によい運動をご紹介いたします。
この運動は、レジスタンストレーニングの一種で、高齢者にも行える低い強度の運動です。
ロコモーショントレーニングは、2009年に日本整形外科学会から発表されたトレーニングです。
下肢の筋肉強化とバランス感覚を養うことを目的としてます。
- 開眼片脚立ち
- スクワット
下記からはロコモパンフレット2015を参考に作成しています。
「開眼片脚立ち」は、バランス感覚を養う為のトレーニングです。
左右1分間ずつ1日3回行いましょう。

肩幅より少し広めに足を広げて立ちます。つま先には30度くらいずつ開きます。

膝がつま先より前に出ないように、また膝が足の人差し指の方向に向くように注意して、おしりを後ろに引くように身体を沈めます。
呼吸をするペースで、5~6回繰り返します。1日3回行いましょう。

予防その3:社会と関わることで予防
社会と関わることは重要です。
地域で開催する催物や集まりに参加することで、外出ができます。
外出をする理由を作ることは重要です。
「買い物」でも「集ま」でも「散歩がてら」でも良いと思います。
週に3回ぐらいは外出をするようにしましょう。
まとめ
ロコモティブシンドロームの予防には、「栄養管理」と「運動習慣」と「社会との繋がり」この3つが重要です。
栄養面では、タンパク質だけではなくカルシムもバランスよく摂取し筋肉増加と骨の強化が必要す。
また、運動面では太ももやふくらはぎを鍛える為に椅子を使ったスクワットを紹介いたしました。
予防をすることで、自分一人で「立って」「歩く」ことができれば生活の質は向上します。
若いうちから運動習慣と栄養を意識すれば、必然と目が外に向き社会とのつながりを維持することができるはずです。
早めの予防対策をしていきましょう!。