ロコモティブシンドロームとは?知っておくべき基本知識

ロコモティブシンドロームとは?知っておくべき基本知識

患者さんから退院する時に、「お世話になりました。ありがとうございます。」とお礼を言われます。

入院する時は、体調が悪く暗い表情でしたが健康を取り戻し退院する姿を見ると看護師やっていて良かった~と思います。

先日退院する方が、「これで、また元気に働けます!」と言われたのを聞いて、「起きて働く果報者」ということわざを思い出しました。

起きて働く果報者とは、「健康で働けるほど幸せなことはなく、元気に過ごしている時は、健康のありがたさをつい忘れがちだが、当たり前の平凡な日常こそ、実は大切なものだ」という意味のことわざです。

ちなみにで「果報者」「幸運な人」を指すそうです。

確かに、病気をすると健康のありがたみを実感します。

特に、65歳前後ぐらいから健康のありがたみを強く感じます。

何故なら、この時期から人間の体は新陳代謝の低下、低栄養による体調不良が進むからです

今は、寿命が長くなっているので、仮に65歳ぐらいから健康がすぐれないと、不調な状態でその後の20年近くを過ごすことになります。

高齢者社会を危惧する国や学会も高齢者が健康に過ごす為の手引き等を多く公表しています。

その中で、話題のキーワードはロコモティブシンドロームです。

そこで、今回は「ロコモティブシンドロームとは?」から始まり、知っておくべき「原因」や「予防方法」の基本知識を説明します。

早い時期からロコモティブシンドロームの知識を持ち、「果報者」を目指しましょう!

もちろん「働くのはもうい~や」という方でも必見です!。

ロコモティブシンドロームとは

「ロコモティブシンドローム」は、日本整形外科学会が、2007年(平成19年)に、新たに提唱した言葉です。

ロコモティブシンドロームって名称が長く、あまり聞きなれないですね。

覚えやすくしように「ロコモ」と表記している場合もあります。

「ロコモ」と表記することで、症状に興味を持たせ広く知ってもらう狙いだと思います。

認知が進めば、ロコモティブシンドロームの予防を促すことができ適用者の拡大を防ぐことができます。

脳から筋肉に指示

ロコモをもじった名前のサプリも出ていますので、今後は「ロコモ」という言葉が、「メタボ」と同じように広がっていくと思います。

下記がロコモティブシンドロームの定義になります。

加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態

「運動器の機能」は「立つ」「歩く」といった移動する体の動き(機能)を指しています。

高齢になると、体全体の機能が落ちます。

老化により仕方のない事ですが、落ちていく機能の中でも、「立つ」「歩く」にフォーカスがあてられていることがポイントです。

予防がなぜ必要なのか

ロコモティブシンドロームを予防する目的は、「要介護や寝たきりに」になってしまうことで高齢者の日常生活の質が落としてしまうからです。

高齢になっても、「旅行に行ったり、美味しいものを食べたり、自分のことは自分で行える」そんな生活を送りたいですよね。

その為には、「自分の足で立ち、歩いて出かける」ことは活き活きした生活を送る為に欠かすことができないのです。

このような活き活きした生活を高齢になっても送る為に、ロコモティブシンドロームの予防が必要なのです。

運動器の機能ってなに?

運動器とは、身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。

運動器
参考文献
日本整形外科学会より

歩く場合を考えてみると、歩く動作は、まず、頭(脳)で足を「踏み出せ」と指示を体に出します。

その指示は、脊髄をとおり、末梢神経から筋肉に届き、筋肉が収縮することで、膝を曲げて、「前に踏み出す」という一連の連携した動きになり、その連続により人は歩くことができます。

この一連の連携動作に関わる「骨、筋肉、関節、神経など」が運動器になります。

脳から筋肉に指示

運動器とあるので、「骨が含まれるのかな、、」と思いますが、骨が神経を守ったり、筋肉を支える役割を担っています。

その為、骨は運動器に含まれています。

また、「器」とあるので、臓器等の部位を指すイメージですが、運動器は連携動作に関わる「全体」を意味しています。

その為、運動器のどこかに支障が出ると「立つ」「歩く」ことに支障が出てきます。

ロコモになるキッカケ

運動機能が落ちて寝たきり、要介護になるキッカケは主に下記4つです。

キッカケ
  • 骨折・転倒
  • 関節疾患
  • 脊髄損傷
  • 高齢による衰弱

上から3つ(骨折・転倒/関節疾患/脊髄損傷)は、運動器に障害が発生したことが原因です。

骨折・転倒、関節疾患、脊髄損傷により歩くことに支障が出て外出頻度が落ちた結果、「寝たきりや介護が必要な生活」になります。

また、高齢による衰弱はフレイルを意味し、同様に寝たきりや介護が必要になります。

下記の「介護が必要となった主な原因」から分かる通り、ロコモティブシンドロームとフレイルが全体の約38%を占めています。

フレイルに関する詳細は下記をご覧ください。

フレイルとは
介護が必要となった主な原因
原因率(%)
認知症18.0
脳血管疾患(脳卒中)16.6
高齢による衰弱 13.3
骨折・転倒12.1
関節疾患10.2
心疾患(心臓病)4.6
パーキンソン病3.1
糖尿病2.7
悪性新生物(がん)2.4
脊髄損傷2.3
呼吸器疾患2.2
視覚・聴覚障害1.3
その他8.2
わからない 1.1
不詳 2.0

その為、要介護にならない為には、ロコモティブシンドローム及びフレイルへの予防対策が非常に重要になります。

介護が必要となったおもな原因

ロコモになる原因は?

「骨折/転倒」「 関節疾患」「脊髄損傷」「 高齢による衰弱」がキッカケでロコモティブシンドロームになるケースは高いですが、このキッカケはどうして発生するのでしょうか。

主に身体的な機能低下が原因になります。

具体的には、下記3つとなります。

原因
  1. 骨粗鬆症
  2. 変形性関節症/変形性脊椎証
  3. 筋力低下

原因1:骨粗鬆症

骨密度が低下し、骨の中がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。

カルシウムやマグネシウムが不足しているだけではなく、カルシウムの吸収を助けるビタミンDなども不足していると骨粗鬆症になりやすいです。

また、骨の形成には一定の運動が無ければカルシウムの吸収が衰え骨の形成が悪くなります。

骨粗鬆症は、加齢が進むと発症する病気ですが、女性の閉経後に発症しやすい病気です。

なぜなら、閉経の時期になると骨からカルシウムが流出するのを防ぐ女性ホルモンが減り、骨にカルシウムが蓄積されるより流出する方が多くなる為、骨の密度が落ちてしまうからです。

カルシウムの流出を防ぐ為にはイソフラボンをとるとよいです。

イソフラボンは大豆に含まれるので、1日50mgが理想と言われているので豆腐、納豆を食べることをお勧めします。

原因2:変形性関節症/変形性脊椎症

変形性関節症は、加齢、遺伝、ケガにより骨と骨の間にある軟骨とその周辺の組織が次第に損傷し、痛みを発します。

軟骨は、骨と骨の間で、クッションの役割をしているのですがこの機能に支障が発生します。

変形性関節症は、高齢やケガにより発症するイメージですが、肥満でも発症します。

肥満により膝に体重がかかり、軟骨のクッション機能が劣化すると痛みを発症します。

また、変形性脊椎症は、椎間板が変形することで痛みを発症する病気です。

脊髄の構成要素に椎体があり、その椎体と椎体の間に椎間板があります。

椎間板は、クッションの役割であるが、機能が十分でない為炎症を起します。

よく耳にする椎間板ヘルニアは変形性脊椎症の一種です。

原因3:筋力低下

筋力が落ちると、脳からの「指示」をスムーズに行うことができなくなります。

例えば、自分では足を30㎝上げたつもりでも、実際は20㎝しか上がっていない場合は、自分の意識と体の動きが一致していないので、段差で転倒します。

また、自分の体重を支えるだけの筋力量が無い為、立ち上がった場合や足を前に踏み出した場合、足が体重を支えられずにフラフラします。

このように加齢による筋肉の減少を「サルコペニア」と呼びます。

サルコペニアは、低栄養と運動不足が原因です。

高齢者の場合は栄養をとれない場合があるので、まずは栄養管理が重要になります。

サルコペニアに関する詳細は下記をご覧ください。

サルコペニアとは

症状が出る年齢は?

ロコモティブシンドロームの症状が次第に表れるのは、一般的にはプレフレイルに入る60歳代からになります。

しかし、20代~30代でも、ロコモティブシンドロームに似たリスク状態にすすでしまうケースがあります。

それは、過剰なダイエットです。

ロコモティブシンドロームでは、加齢により運動器が衰えた場合を想定しており、ダイエットにより骨粗鬆症になることは加齢とは関係ありませんが、結果として要介護が必要だったり寝たきりになるリスクが高まります。

過剰なダイエットによりカルシウムやビタミンDが不足して骨粗しょう症を引き起こし、鉄分不足で貧血になれば、いつもフラフラした状態で転倒しやすく、その結果骨折を誘発します。

また、拒食症では栄養をほとんど取れない状態まですすみ、家に閉じこもってしまいます。

何らかのキッカケで、すべての年齢で要介護や寝たきりのリスク状態に陥ってしまうのだということを理解する必要があります。

症状が進む過程

ロコモティブシンドロームは、突然発症するわけではなく、高齢になるにつれて、「活動量の低下」や「運動習慣の減少」「生活習慣の変化」等により栄養不足と運動不足が相互作用し骨粗鬆症、関節の炎症、筋肉低下を引き起こします。

最終的に一人では「立てない」「歩けない」という症状が出て介護が必要になります。

未病状態(潜在的状態)の時期

加齢により生活習慣が変化し、活動量の低下、運動習慣の減少が進みます。

この状態はロコモティブシンドロームとしての特徴はあまり見られない予備という位置づけです。

顕在化の時期

腰痛や膝の痛みが少しずつ現れ、体を動かすことがおっくうになり始めます。

徐々に予兆が始まり、医療的な介入が必要になってきます。

要介護の時期

運動器の支障が重篤化し、引きこもり、寝たきりになります。

この時期まで来ると、一人では日常生活を送ることが困難な為、介護が必要になります。

症状が進む過程
ロコモティブシンドロームの症状が進む過程

ロコモのチェック方法

ロコモティブシンドロームをチェックする方法は「ロコモチェック」と「ロコモ度テスト」の2つのチェック方法があります。

ロコモチェック

ロコモチェックは、簡易的セルフチェック方法です。

ロコモティブシンドロームに自分が近いかどうかを知ることを目的に作成されています。

その為、ロコモチェックは、判定をするというよりロコモティブシンドロームがどんなものであるのか、どんなことに気を付けて生活を送るかという問題意識を持つためのキッカケ作りという側面もあります。

下記チェック項目の1つでも該当するとロコモティブシンドロームの可能性が高いです。

ロコモチェック
  • 片足立ちで靴下がはけない
  • 家の中でつまずいたり滑ったりする
  • 階段を上がるのに手すりが必要である。
  • 家のやや思い仕事が困難である
  • 2Kg程度の買い物をして持ち上げるのが困難である
  • 15分くらいつづけて歩くことができない
  • 横断歩道を青信号で渡り切れない
参考文献
ロコモチェックより

ロコモ度テスト

ロコモ度テストは、「立つ」「歩く」という運動機能をチェックする為のテストです。

より具体的な方法で確認を行う為、現状の体の状態を理解し、将来ロコモティブシンドロームになりうるかを確認することができます。

2013年に日本整形外科学会が発表したテスト方法で、下記3ステップでテストを行います。

ロコモ度テストの3ステップ
  • 立ち上がりテスト
  • 2ステップテスト
  • ロコモ25(自記式質問票)

ロコモティブシンドロームの予防方法

ロコモティブシンドロームの予防には大きく下記2つの方法で取り組みます。

予防
  • 栄養管理による予防
  • 運動習慣による予防

栄養管理による予防

栄養管理としては筋力をつける為の栄養が必要である為、肉や魚といったタンパク質を日々食べることが重要です。
また、骨を強くする為に牛乳といった食品からカルシウムを摂取し、カルシウムを吸収しやすくする為に干しシイタケ等に多く踏まれているビタミンDを合わせて接収することが望ましいです。

詳細は下記をご覧ください。

予防その1:栄養管理による予防

運動習慣による予防

栄養を摂取できたとしても適度な運動を行わなければ、筋力は思うようには増えません。また骨も運動により適度な刺激が無ければカルシウムの吸収が悪くなります。

その為、運動を日々行う習慣は必須と言えます。

具体的には、下肢筋肉とバランス力を鍛えるトレーニングで、スクワットや片足立ちによるトレーニングが推奨されています。

詳細は下記をご覧ください。

予防その2:運動習慣による予防

まとめ

いかがでしょうか。

話題のロコモティブシンドロームの基礎知識を知って頂けたと思います。

高齢になれば、筋力等の低下は避けられません。

筋力等の低下が進むと運動器の機能が衰える為、要介護や寝たきりになるリスクは上がりますので予防が何より重要です。

早い時期から予防を心がけ、自分一人で「立ち」「歩く」ことのできる体作りを目指しましょう!。

その為には「栄養管理」と「運動習慣」が必要です。

少しずつでも取り組めば、必ず効果を実感できるはずです。

本ブログの基本知識で一人でも多くの高齢者が健康な体を手にした「果報者」になれれば嬉しいです!。